最近、相次いで海外系の小売店に行く機会を得た。ひとつはスウェーデンの「IKEA」、もうひとつはアメリカの「costco」(名目上コストコは卸(ホールセラー))。この両店に共通しているのが、徹底した売場管理コストの削減。双方のお店を見ていて率直に感じさせられたのは、果たしてこれが日本で生まれ得た形だろうか?ということ。恐らく日本の風土では決して生まれてくることが無かったように感じる。日本的小売りの代表格とも言えるのが、サイトのメインでもある「コンビニ」であるはず。見てみると分かるがもう全く正反対にあるといっても過言ではない。まるっきり思想が違う。どちらが良いというのではなく、まったく異なっている。日本の小売業が国際的に見て効率が悪いという指摘は以前からなされていたが、これは個人商店が多いからとの指摘もまた以前からなされていた。実際、日本の大手小売チェーンの効率は世界的に見てもそう引けをとらない。
イケアにしろコストコにしろ、徹底的に売場管理コストを削減して、効率化を図ろうとしている。イケアでは、買い物客は最後に自ら倉庫に行って自分が欲しい商品をカートに積み込まなければならない。その分、売場ともいえるショールームには必要最小限の人員配置をし、商品引渡しなどに関わる人間はほとんどいない。イケアの商品は、そうして売ることを前提にして商品をデザインし、梱包まで考えられている。試しに机と椅子を購入してみたが見事なまでにフラットで隙間無く箱に詰め込まれている。そうした商品がショールームを巡った最後にある倉庫ブロックで整然と堆く積み上げられている。一方コストコはもっと大味な印象。商品はどでかい棚もしくはパレット積みのまま売場に並べられている。フォークリフトなどでそのまま置いただけの状態。商品もパレット積みすること、大容量販売することが前提でパッケージデザインされている。国内メーカーのものも一様にそうしたパッケージングで作られているのだから大したものだ。これで売場陳列などのコストが大幅に削減されるため、人件費の大幅な削減が達成されるという寸法。聞くところによるとコストコのアイテム数は、数だけでいくとあの売場の広さでコンビニと大して変わりないらしいというから驚き。
翻って日本のコンビニ。コンビニでは売場効率をよくするため、一品一品を徹底的にPOS分析をし死に筋商品を排除していく。単品管理という言葉の語源はここにある。最近では書籍まで単品管理されているのだからこれまた驚き。常に売れ筋が並ぶよう品揃えをブラッシュアップし続けることによって、棚あたりの売上効率の最大化を図ろうとしている。売れるものしか並んでいない状態を常に目指している。コンビニは安売り店ではないため、このことによってチェーン本部とフランチャイズオーナーにとってよりメリットが生まれるという訳。勿論そのためにチェーン本部は、こうした単品管理システム構築のため莫大な投資を行っている。日本中の店舗から逐一集積されるこのPOS情報は、各業界メーカー各社にとって金を出してでも欲しいものになっているはず。
一方で売場管理コスト削減の思想があり、また一方で販売情報分析による効率化の思想がここにある。何とかベストミックスしたりすることはできないのか?と考えずにはいられない。そうすれば世界と比べて「引けをとらない」のではなく、世界に比べて「抜きん出た」効率を有する小売業が創造できないだろうか?と思う。セブン&アイホールディングスが新たに「ザ・プライス」というディスカウント業態の店舗を始めるという。パートタイマー増やしたり、メーカーと直取引をすることでコスト圧縮を図るとのことであるが、そういうこれまでの延長線上のような考え方でメーカーや問屋、従業員をいじめる方向ではなくて、もう少し違った切り口で効率化の追求をしていったら良いのになぁと思う。
「コンビニ店長のためのPOP駆け込み寺」
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